小規模事業者こそ、経営を「社長の頭の中」から外に出す必要があります。
今日つくるのは、毎月自然に回る経営OS(=会社の運転ルール)です。
小規模事業者持続化補助金(以下、「持続化補助金」)の事業計画書は「提出して終わり」ではなく、月次運用に転用すると経営ツールとして、一気に武器になります。姉妹編の、経営上の観点を解説するnoteと今日のブログの解説を読めば、採択だけではむしろもったいないと感じるようになりますよ。
【今日やること(3点)】
・根拠を「市場/数字/実行の段取り」の3種類に分けて整理します。
・次に、ちぐはぐ(矛盾)が起きる定番パターンを先につぶします。
・最後に、計画書をそのまま「月次運用」に転用できるA4チェックリストを作ります。
1.様式に落とすべき根拠は「市場/数字/段取り」の3つだけ
小規模事業者の計画書づくりが苦しくなるのは、能力の問題ではありません。
原因はシンプルで、「根拠が混ざる」ことです。
市場の話と、数字の話と、段取りの話が、1つの段落に全部入ると迷子になります。
読む方も迷子、書く方も迷子です。だから計画がちぐはぐになります。
そこで、根拠を3種類に分けます。専門用語は不要です。次の3つだけで十分です。
(1)市場の根拠(=誰が、何に困っているか)
計画の出発点です。社長が普段、お客様から聞いている生の声が一番強いです。
ここでは、例えば、「誰が客か」であれば「近隣の共働き世帯」「現場監督」「設備保全担当」といった感じで、まず相手を具体化します。
次に「何に困っているか」は、例えば「時短したい」「管理が面倒」「故障が怖い」、といった形で、困りごとを言葉にします。
最後に「何を選ぶ基準か」は、例えば「早い」「分かりやすい」「安心」「同じ品質」といった感じで、お客様が判断するときの軸に落とします。
ここでの鉄則は「困りごとは1つに絞る」ことです。
困りごとを欲張ると、計画の芯がぼやけます。
(2)数字の根拠(=どれくらい増える/減るのか)
立派な数字は不要です。小規模事業者は「筋」が大事です。例えば「何が増えるか」は「問い合わせ/月」「見積り/月」「受注/月」といった形で回数で置けますし、「何が減るか」は「手戻り」「ムダな移動」「作り直し」といった感じで、現場のムダを言葉にできます。加えて、粗利(売って残るもうけ)がどの程度変わるかも見ますが、数字が苦手なら最初は回数だけで十分です。回数→金額の順で作ると、ブレにくくなります。
(3)実行の段取り(=誰が、いつ、何をするか)
ここが、小規模事業者が一番つまずきやすい部分です。でも、ここができると社長属人が1段下がります。
例えば、担当は「社長」「現場」「事務」「外部」といった形で割り振り、作業は「何をやるか」を短く書き、期限は「いつまでに」を決め、最後に確認として「誰がチェックするか」を置きます。月次運用に転用するなら、ここが最重要です。段取りが書けると回ります。段取りが曖昧だと止まります。
2.ちぐはぐの潰し方(よくある矛盾パターン+修正案)
持続化補助金の計画書で最も多い失点は、内容が弱いことだけではありません。計画が矛盾していることです。矛盾は、読み手にすぐ伝わります。採択後も止まります。
ここでは代表的な4パターンを、現場でよくある例で整理します。
①パターン1:ターゲットが変わるのに、提案が変わらない
「若い層を取りたい」「法人を取りたい」と言っているのに、打ち出し方が既存客向けのまま。これはかなり多いです。
ただし重要なのはターゲットが変わったからといって、必ずしも商品そのものを変える必要はないという点です。
小規模事業者は商品を増やしすぎると、現場が回らなくなります。だからまずは、同じ商品でも「提案の型(=見せ方/説明の順番/安心の出し方)」を変えるのが有効です。
建設・設備の例で言うと、既存客は顔見知りで信頼済みです。ところが、新規客は初回なので不安が強い。ここでチラシに「水回り工事一式対応」だけ書いても、初回の不安が消えず、問い合わせが起きにくいです。修正は、商品を変えるより「初回向けの提案の型」を作ることです。例えば「初回点検15分+写真で説明+見積り無料」といった出し方や、「選べる3プラン(最低限/標準/しっかり)」といった提示に変えるだけで、新規客が一番嫌う分からなさが減り、入口の反応が上がります。
飲食店の例なら、常連はメニューを知っているので迷いませんが、新規客は迷います。量も不安です。修正は「初回の選び方」を用意することです。例えば「初めての方向けセット」「人気ランキング」「量の目安」といった形で、新規客が迷わず選べる材料を先に出すと、同じ料理でも提案の仕方が変わり、新規の入り方が変わります。
②パターン2:売上を増やしたいのに入口(導線)が増えていない
「問い合わせを10件増やす」と書いていても、入口が増えていなければなかなか数字は変わりません。小規模事業者の成果は入口の設計でほぼ決まります。
製造の例で言うと、元請1社への依存から脱したいのに、新たな取り組みが「会社案内パンフレット作成」だけだと弱くなります。これでは「誰に配るのか」「どう商談に入るのか」が無く、入口が増えません。修正は、入口を2本にすることです。例えば「展示会(名刺獲得)→試作相談→小ロット提案」といった導線を先に決めて、その導線の中でパンフレットを使う、と位置付けると筋が通ります。
サービスの例なら、紹介だけが唯一の入口だと新規が増えません。修正は入口を見える化して、導線を1本増やすことです。例えば「紹介+問い合わせフォーム」「提携先(不動産/管理会社)+紹介」といった形で、社長が自分で動かせる入口をまず作ると、数字の根拠が立ちます。
③パターン3:段取りがないのに成果だけ大きい
小規模事業者の最大の制約は「社長の時間」です。段取りがない計画は、内容が正しくても回りません。
建設の例で言うと、見積りも現場も社長が抱えている状態で、「営業強化」と言っても回りません。修正は、成果を下げてもいいので段取りを先に作ることです。
例えば「見積りの型を作る」「現場写真の撮り方を統一する」「月次30分の案件棚卸し」といった仕組みに寄せると、社長の時間制約の中でも回りやすくなります。
飲食の例なら、「SNS強化」も担当が曖昧だと止まります。修正は続く形に落とすことです。例えば「週1投稿」「写真3パターンを先に作る」「下書きは事務、確認は社長」といった感じで負荷を下げると止まりにくくなります。
④パターン4:数字の単位が混ざる(回数と金額が行ったり来たり)
最も多い矛盾です。派手な数字を書くほど、筋が見えないと逆に弱くなります。
製造の例なら、「展示会で500万円受注」と書く前に、回数の根拠が必要です。修正は、回数→金額の順に作ることです。例えば「名刺50件→商談10件→試作3件→受注1件」といった筋を置き、その上に平均単価を乗せると数字が自然になります。
小売・サービスの例なら、「売上100万円増」と言う前に、何を増やすかを決めます。
修正はあれこれよりも、増やす要素(レバー)を1つだけに絞ることです。例えば、「来店を月10人増やす」「客単価を500円上げる」といった形で、まず1つ決めることです。
3.例え話:家計簿アプリではなく「封筒分け」から始める
最初から完璧な経営管理は不要です。小規模事業者は、まず封筒分けで十分です。
家計でも最初は「食費」「家賃」「通信費」の3つを分けて、ズレを見ます。会社も同じで、KPI(=かんたんに言うと、毎月見る数字)を3つだけ決め、担当と確認日を決める。この封筒分けだけで、経営が回り始めます。
4. A4「計画書→月次運用」チェックリスト(そのまま使える)
先に大事なことを言います。このチェックリストは、全部埋める必要はありません。
空欄があっても回りますし、まずはできる範囲からで大丈夫です。
やることはシンプルです。今月のテーマを1つ決める。KPIを3つ決める。担当と確認日を決める。月次30分を固定する。これで経営OSになります。ではテンプレです。
【A4テンプレ:計画書→月次運用チェックリスト】
1)今月のテーマ(1行)
例えば、「新商品の打ち出しを、初回向けに変える」「見積りの型を作る」「入口を、1本増やす」といった感じで、今月やることを1つに絞ります。
2)根拠(市場/数字/段取り)
・市場(誰の/何の困りごと)
・数字(何が増える・減る)
・段取り(誰が/いつまでに/何を)
(コツ)市場→数字→段取りの順で書くと矛盾が減ります。
3)KPI(毎月見る数字は3つだけ)
・KPI1:問い合わせ件数 目標/現状
・KPI2:見積り件数 目標/現状
・KPI3:受注件数 目標/現状
(ポイント)売上は後でOKです。まず回数から始めます。
4)データ元(どこを見れば分かるか)
例えば、KPI1は「メール」「電話記録」「フォーム」といったところを見れば分かるようにし、KPI2は「見積書番号」や「Excel」、KPI3は「請求書」や「受注台帳」といった形で、既にあるものから決めます。
(ポイント)新しいツール導入は不要です。紙でもExcelでもLINEでもOKです。
5)担当(1KPI=1人)
・KPI1担当:
・KPI2担当:
・KPI3担当:
(ポイント)社長が全部見るのはOKです。ただ「入力/集計/報告」を分けると、属人化が減ります。
6)会議体(短く・固定)
・月次会議(30分):毎月○週/○曜日/○時
・アジェンダ(固定)
・KPI3つの確認(5分)
・良かった点/悪かった点(10分)
・来月の一手を決める(15分)
(ポイント)会議を伸ばすより、同じ形で毎月やる方が効きます。
7)矛盾チェック(ちぐはぐ防止)
・顧客は誰か?
・その顧客向けの提案になっているか?
・入口は増えているか?
・段取り(誰/いつ/何を)は明確か?
・数字は回数→金額の順で書いているか?
8)今月の一手(1つでいい)
・今月の一手:
・期限:
・確認日:
・できなかった時の代案:例えば「範囲を半分にする」「翌月に回す」「外注する」、といった感じで、逃げ道も先に用意しておくと止まりにくくなります。
補足です。補助金は後払いです。支払い時期は必ず先に確認してください。
(この一点だけで、実行の詰まりがかなり減ります)
5. 次回(製造・建設向け)への導入
次回は、製造業・建設業向けに、このテンプレを現場へ落とし込む方法を扱います。
製造業なら、「見積り→製造→検査→納品」の、どこで詰まるかをKPI化します。建設業なら「現場段取り」と「見積りの型」を整えるだけで、手戻りが減ります。共通して、社長が全判断を抱えない型づくりを扱います。
【第19回の制度情報(1点)】
第19回(一般型)では、賃金引上げ特例に該当する場合、補助上限は最大200万円です。さらにインボイス特例にも該当する場合、補助上限は最大250万円です。補助率は2/3です(賃金引上げ特例のうち赤字事業者は3/4です)。通常枠の補助上限は50万円です。
「経営OSを作りたいが、何から手をつけていいか分からない」場合には、今日のA4を埋めるだけで十分です。空欄があっても動きます。まずKPIを3つに絞って、月次30分の場を固定しましょう。
必要なら、御社の業種に合わせた3つのKPIの選定から一緒に設計します。
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※対象:創業2年以上の法人様で、従業員数が商業・サービス業は1〜5人、製造業その他は20人以下で、今後本格的な企業経営への脱皮を目指したい方、とさせて頂きます。